【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 ある日ガーデニングをしている最中、お義母さまにこんな提案をされた。


「ジェシカさん、華道をやってみるつもりはない?」
「華道ですか?」


 思い切り土まみれになっていて失礼に思ったけれど、お義母さまはとても穏やかで優しい方。
 時折私に料理を教えてくださったり、家のことを教えてくださる。

 気品に溢れながら慎ましやかで、だけど堂々としているお義母さまに密かに憧れている。
 これぞ大和撫子とも言うべき凛とした姿がとても素敵だ。


「知り合いが華道の家元でね。習ってみたらいいんじゃないかしら」
「興味あります! 日本の伝統的な生け花ですよね」
「そうよ。あなたなら素敵な生け花ができるわ」


 お義母さまに言われてすっかりその気になった私は、早速紹介していただいた華道教室に通うことにした。
 千寿(せんじゅ)流という華道の名門で沢山の生徒さんがいるらしい。

 まず簡単に生け花の基礎を教えていただき、先生がお手本でその場で生けてくれた。
 特に悩まずに花を選んでいたが、その出来上がった生け花はとても見事だった。

 思わずその美しさに魅了されてしまう。
 西洋とは違い、隙間や空間も美しさと捉える日本の生け花はとても奥が深い。

 マムにも見せてあげたかった。
 きっとマムも気に入ったに違いない。

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