【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 先生に教わりながら自分でも生けてみた。
 最初は花を選ぶのも、どのように生けたら良いかもわからず戸惑ってしまう。
 そんな私に先生は優しく諭してくれた。


「まずはテーマを決めましょう」
「テーマ……」
「何でも良いのです。あなたが表現したいものを花に託すの」


 私は悩んだ挙句、和食をテーマにした。
 和食は母が大好きだったものであり、来日したきっかけでもある。

 母の作ってくれる和食が大好きだったし、大切な思い出だ。
 母との幸せな日々を思い描いて、花に込めた。


「とても素敵ですね」


 先生にも褒めていただき、最初にしては満足のいく作品ができて嬉しかった。


* * *


「それでお義母様に紹介していただいて、華道を始めたんです!」
「そうか」


 その日の夕食、私は早速華道を習い始めたことを和仁さんに話した。


「難しいけど、日本の生け花という文化に触れられるのは楽しいですね」
「君は日本文化が好きなのか?」
「あ、はい。母が親日家だったのでその影響で。
……一応ハーフだし日本生まれ、日本育ちなんですけど見た目がこんな感じだから、和物が好きだと変な顔されるんですよね」
「どうして?」
「アメリカ人はアメリカ人らしくしろって……一応国籍は日本なんですけど」
「誰がそんなこと言うんだ?」
「あ、日本人の義母(はは)です……」


 多分義母は私の顔を見ていると、不倫相手を見ているようで気に入らないんだと思う。

 父を誑かしたアメリカ女の娘。
 義母にとっては私が日本で生まれたかどうかなんて、関係ない。
 ただこの顔が疎ましいのだ。


「信じられんな……そんなことを言うのか」
「あっでも気にしてませんから!」
「怒らないのか?」
「……もう慣れましたから」


 あまり和仁さんに気を遣わせたくなくて、笑ったつもりだった。
 でも上手く笑えていなかったのかもしれない。


「うちでは君がやりたいことを好きにやるといい」
「え?」

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