【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
華道教室からの帰り道、とぼとぼと歩きながら溜息を吐く。
華道ってそういうこともわかっちゃうんだなぁ。
先生は自分の思いを花に託すのだと仰っていた。
だからこそ、私の悩みがありありと表されてしまったのだと思う。
先生は「そんな時もありますよ」と優しく微笑みかけてくれた。
ふと、目の前に仲睦まじく歩いているカップルの姿が目に入る。
手を繋いで歩きながら、彼氏が言ったことに大して彼女が「やめてよー」と言っていた。だけど表情は笑顔で、二人の雰囲気からとても仲が良いことが伝わってくる。
なんだろう、今までは気にならなかったのに、仲の良いカップルや夫婦を見てると羨ましくなる。
私なんて置いてもらえてるだけで有難いのに。
これ以上の贅沢を望むなんて、欲を出しすぎてしまう。
そうだ、久しぶりに買い物でもしよう。
結婚してからどこかに出かけたことなんてなかったし、少し遠出してみるのも悪くないかもしれない。
何より気分転換になるかもしれないと思った。
* * *
翌日、玄関で靴のかかとをトントンする。
久しぶりにワンピースを纏い、お出かけスタイルで出かける。
このワンピース、買ったのは一年前だけど変じゃないかしら。
「出かけるのか?」
「きゃっ!?」
突然声をかけられて思わず大きな声をあげてしまう。
「……そんなに驚かなくても」
声をかけたのは和仁さん。
今日は珍しくオフの日で、浴衣姿なのがカッコいい。和仁さんは普段から浴衣を部屋着にしている。
髪はセットしてなくて前髪を下ろしている姿もカッコいい。
どうして和仁さんって何をしてもカッコいいの?