【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 そう言って和仁さんが持ってきたのは、涼しげなシアーカットソーにハイウェストのチェックスカートをドッキングしたワンピースだった。
 大人ガーリーな雰囲気で可愛らしく、シルエットもとても綺麗に見える。


「すごくかわいいですね!」
「着てみないか?」
「えっ」
「ご試着可能ですよ」


 言われるがまま試着室へ行き、何故かワンピースを試着する流れになっていた。
 まさか和仁さんから勧められるなんて思わなかった。しかもこんなに可愛らしいワンピース。

 どうしてこれを選んでくれたのかしら?
 和仁さんには私がどんな風に映ってるの?


「どう、でしょうか……」


 着てみたはいいものの、似合っているのか全然わからない。


「…………」


 出てきた私を見て、和仁さんは固まっていた。
 こちらを凝視したまま何も言ってくれない。

 言葉にできない程似合ってないということ?

 いたたまれなくて泣きそうになり、試着室のカーテンを閉めた。


「やっぱり着替えますっ」
「あ、違うんだ」
「わかってます! 似合ってないんですよねっ」
「違う、逆だ。ものすごく似合ってる」


 恐る恐るカーテンから覗いてみると、和仁さんは若干頬を赤らめていた。


「想像以上に似合っていて……驚いていただけだ」
「……っ」


 私は再びカーテンを閉めてしまう。
 今度は別の意味で恥ずかしくて。心臓の音が狂ったリズムを刻んでいて、おかしくなりそう。

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