【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


「これ、買います」
「えっ!?」


 そのまま和仁さんはレジに行き、会計しようとするので慌てて止めた。


「大丈夫です! 自分で買えますっ」
「いやいい」
「でも……っ」
「妻にプレゼントするくらい普通だろう」


 そんな風に言うなんて、ずるい……。


「ありがとうございます……」
「そのまま着て行ったらどうだ?」
「ええ?」
「良いじゃないか、せっかく似合っているんだ」


 和仁さん、どうしてそんなに優しくしてくださるの?

 私は書類上だけの妻じゃなかったの?
 愛さないってはっきり言ったくせに、こんなに良くしてもらったら――期待してしまう。


「他に見たいものは?」
「えっと、もう……」


 大丈夫です、と言いかけてから本屋があるのを見つける。


「あの、本が見たいです」
「本か」
「でも、和仁さんは見たいものないんですか?」
「ない。本屋に行くか」


 そう言って自ら本屋の方へ向かう和仁さん。
 今日の和仁さん、どうしたのだろう。

 どうしてそこまで私に付き合ってくれるのか、わからない。
 だけどこうして付き合ってくれることが、どうしようもなく嬉しいと感じてしまう。

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