【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 洋書コーナーに行き、海外の小説を物色する。


「あった! この小説が読みたくて」
「英語なのか」
「そうなんです。日本語訳もあるんですが、母は日本語の読み書きは得意じゃなかったので絵本とかは全部英語だったんです」


 子どもの頃、英語の絵本を読み聞かせてもらった。
 それから翻訳本があっても何となく原文が読みたいと思うようになり、活字は英語で読む方が多かったりする。


「子どもの頃から自然と英語も日本語も身についていたので母には感謝してます」
「そういえば君が英語を話しているところは見たことないな」
「まあ……喋る機会ないですしね」


 実は聞かれて千原さんと笹部さんには英語で話したことがあるのだけど、二人ともポカーンとした顔を浮かべていた。


「Would you like to try speaking English sometime?(たまには英語で話してみるか?)」
「ええっ!?」


 ものすごく流暢な発音の英語で話しかけられ、びっくりしてしまう。驚きながらも私も英語で返した。


「Speaking English?(英語話せたの?)」
「ほんの少しな。流石にネイティブには負ける」
「でも綺麗な発音でした!」
「それはよかった。極道のくせに意外だろう? だが案外役に立つんだよ」
「すごいです……!」


 英語も話せるなんて和仁さんって完璧すぎない!? こんなに優しくてハイスペックな人が極道の次期組長だなんて到底思えない。

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