【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
第四話 抑え切れない恋心 side.和仁
関東を統べる極道・桜花組は、世間には知られていないが実は警察公認という異色の組である。
その歴史は江戸時代まで遡り、所謂岡っ引として活躍していた。
時代と共に姿は変わっていくが、その信念は今も変わらない。
弱きを助け、強きを挫く。
時には警察が介入できない事件の裏で暗躍し、裏世界を統べることで平和を守る。
警察の旭日章と同じ桜の家紋は、表舞台から平和を守る警察官と同じ正義の証とされている。
とはいえ、極道は極道である。
俺は桜花組組長の一人息子として生まれ、生まれた時から桜花組次期組長となることを宿命付けられていた。
物心ついた時から人の上に立つことは何かと説かれ、幼少期から裏世界での生き方を学ばされる。
結婚をする気はなかったが、跡取りが欲しい父の命令で仕方なく結婚する羽目になった。
それもかなり強引なやり方で見合い相手を見繕ってきたようで、極道そのものとも言える父のやり方に呆れるしかない。
正義の味方ぶろうと、結局根本は極道なのだ。
父が見繕ってきたのは、あるメーカー企業の社長の娘だった。倒産の危機に陥っていたところを救う条件として、娘を嫁に欲しいと言ったらしい。
この世界は様々なしがらみと思惑が複雑に絡まり合っている。
身元がはっきりしており、尚且つ桜花組に不利益がないことが望ましい。
父に恩を売られた社長は、この条件を飲むしかない。
それに会社は中堅企業といった規模感で、桜花組の脅威となることはない。むしろ御しやすいと考えたのだろう。
全く、父の腹黒さには呆れる。
だがこの父が組長として束ねているからこそ、桜花組の地位は確固たるものとなっているのも事実だ。