【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
母に勧められて華道も習い始めた。
時々居間で母と共に花を生けている姿を見かける。
生け花のことはよくわからないが、とても楽しそうにやっているようだ。
何より母があんなに嬉しそうなのは初めて見た。
彼女の希望で食事を共にし、少しでもコミュニケーションを取るようになってわかったことがある。
ジェシカはいつも前向きだ。決して悲観せず、現状を受け入れてどう楽しむかをいつも考えている。
誰に対しても丁寧で優しく、極道という人種に対しても色眼鏡で人を見ない。
常に人として平等に接しようとする姿勢は、誰にでもできることではない。
書類上だけの妻だと思っていたのに、段々と彼女に興味を持ち始めていた。
そんな彼女が熱を出したと聞いた時は、本当はずっと気を張っていたのかもしれないと思った。
平気なフリをしてずっと気丈に振る舞っていたのかもしれない。無理をさせていたのかもしれないと思うと申し訳なく、おかゆを作った。
おかゆは舎弟たちが熱を出した時にも作ってやったことがあったし、病人を気遣うのは当然だ。
誰に言い訳してるのかわからないが、深い意味などないと自分に言い聞かせていた。
だけど――、