【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「愛の形は恋愛だけではないと思います。舎弟の皆さんが和仁さんを慕うのも愛だと思いますし、和仁さんが家族だと言ってくれたのも愛でしょう?」
違う、家族だと言った言葉に深い意味はない。元々桜花組は皆が家族という信念なのだ。
書類上の妻でも同じ屋根の下で暮らしている以上は家族である、ただそれだけのことだ。
それなのに君はそんな風に受け取るのか。
たまらずにジェシカを抱きしめてしまった。
もう自分を誤魔化せないと思った。
俺はジェシカに惹かれている。
君のことが愛おしい。愛おしくてたまらない。
辛い目に遭っていた君のことを守りたい。
* * *
我ながらどうかしている。強引にジェシカの買い物について来たのも、彼女と一緒にいたかったから。
今更ながらジェシカのことがもっと知りたいと思った。
何となく似合うだろうと思って勧めたワンピースは、あまりにもかわいすぎて放心した。
中学生でもあるまいし、何をしているんだ俺は……。
もう誰かを好きになることなんてないと思っていた。
ジェシカと過ごす時間は心地良い。
彼女の持つ陽だまりみたいな温かさに触れていると、心が癒される。