【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
第五話 通じ合う心
「……、ん」
私はハッと目を覚ます。キョロキョロと周りを見回そうとして、体の自由が効かないことに気づく。
手足を縛られた状態で椅子に座らされていた。
ここはどこ……? 何があったんだっけ?
私は自分の記憶を手繰り寄せる。
和仁さんを待っている間、急に駐車場で男性が倒れて苦しみ出して。
慌てて車から出て駆け寄ったら、急にその人が起き上がって何かを嗅がされて……そのまま意識を失ったんだ。
つまり私、誘拐されたということ……?
「気が付いたか」
「!」
目の前に謎の男が現れる。
見た目は二十代前半くらいで痩せ型の長身。ギョロリとした目の下にクマがあり、顔色はあまり良くない。
黒いスーツを着ていて、シルバーリングがいくつも嵌められていた。口元にはピアスをしている。
何となく雰囲気からこの人も極道なのだろうか。
「お前が吉野和仁の女だな」
「……」
「外人の嫁をもらっていたとは生意気だ」
一応国籍は日本人なんですけど。
そんなことを言っても仕方ないが、内心では少しムッとした。