【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「今のお前の姿を見たら、どう思うだろうな」
顔を近づけて不気味な表情で私を睨み付ける。
怖くないと言えば嘘になるが、それでも尋ねてみた。
「どうしてこんなことをするんです?」
「あの男が憎い以外の理由がいるか?あいつは俺から大事な人を奪い、それなのにのうのうと生きていつの間にか結婚して。ふざけやがって……! あいつは人殺しなんだよ」
和仁さんが人殺し?
「あの男だけは絶対に許さねえ」
拳を握りしめ、奥歯を噛み締める表情は憎々しげに歪んでいた。
「和仁さんは人殺しなんかじゃありません」
「お前が知らねえだけだよ!!」
思わず否定してしまったが、その直後に怒号を浴びせられてビクッとしてしまう。
やっぱり怖い……。
「あの男さえいなければ、美桜お嬢さんは死なずに済んだんだ……っ!!」
ミオお嬢さん……?誰のことかしら?
「それなのに、お嬢さんのこと忘れたかのように他の女とあっさり結婚しやがって」
この人の表情と言葉から、本気で和仁さんのことを憎んでいるのだと窺えた。
だけど、「ミオお嬢さん」のことを語る表情には、哀しみの色が垣間見える。
この人にとって、大切な人だったのだろうか。
「絶対許さねえ!!」
「……っ!!」
カチャリ、と男が拳銃が取り出して銃口を私に向ける。ちょうど額に触れるスレスレくらいの位置まで近づけられ、私は恐怖心で凍りついた。
「あの世でテメェの旦那を恨むんだな」