【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
私、このまま死ぬのかな……?
嫌、怖い、死にたくない。
助けて、和仁さん――……!!
引き金が引いたら、もう終わりだ。
私は涙を溜めた目をぎゅっと瞑る。
「――ジェシカ!!」
ドアを押し破ってきたのは、息を切らした和仁さんだった。かなり急いで来てくれたのか、かなり汗をかいていて息が乱れている。
「和仁さ……っ」
「動くな」
男は私の首元に腕を回し、銃口を直接こめかみに押し当てる。
一瞬希望が見えたかに思えたけれど、すぐに打ち砕かれた。
「和仁さん……」
「……妻を離せ」
和仁さんは見たこともないドス黒いオーラを放ち、目は血走っていた。激しい怒りが全身から滲み出ている。
まるで獲物を捕らえようとする狼のようなオーラに、私も男も気圧される。
和仁さんは一歩一歩近づいていく。
「お、おい来るな! この女がどうなってもいいのかっ!」
男は完全に和仁さんのオーラに圧倒され、銃を持つ手が震えている。それでも私のこめかみにピッタリと銃口を押し付けてくる。
和仁さんはそんな脅しに怯みもせず、大股歩きでどんどん近づいてゆく。
「く、来るなって言ってるだろ!」
私はもうダメだと思ってしまった。思わず目を瞑る。
その直後、ドン!という鈍い音が響き渡る。
ハッとしてすぐに目を開けた。ほんの数秒の出来事のはずだった。
だけど男はその場に倒れ込み、地面には銃が転がり落ちている。
銃は和仁さんが素早く拾い上げ、銃口を犯人に向けた。