【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 何だかわからないけれど、この二人が対峙しているだけで強いプレッシャーを感じる。
 間に入ろうものなら、火花で焼き切られてしまいそうだ。


「今回の件はウチの者の不始末だ。ここは俺に任せてもらおうか」
「後処理は任せる」


 和仁さんはそう言うと、峰さんのほうを振り向く。


「峰、ジェシカのことを頼む」
「わかった。行きましょう、姐さん」
「はい……」


 峰さんに付き添われ、その場から立ち去ることに。
 不安そうに和仁さんの方を振り返いたが、和仁さんがこちらを向くことはなかった。


* * *


 私は峰さんの運転する車に乗り込んだ。
 後ろの席に座ってりながら、おずおずと峰さんに尋ねる。


「あの、和仁さんは大丈夫なんですか……?」
「大丈夫です。姐さんこそ怖い思いをされたでしょう? 我々がついていながら申し訳ございません」
「いえ、そんなこと! 和仁さんが来てくださいましたから」
「若は随分あなたのことを心配しておられましたよ。あんなに取り乱す若は久しぶりに見ました」


 和仁さんが……?
 心配してくれていたのだと思うと、きゅうっと胸が締め付けられる。


「あの、さっきの人は……?」
「あれは桜花組と双璧をなすと言われる染井一家の若頭・染井(そめい)義徳(よしのり)です」
「双璧?」
「はい、桜花と染井は関東極道の中でも強い勢力を持ち、互いに警察から認められた公認の組織でありますが、古くから敵対関係にあります。まあ簡単に言えば商売仇なんです」


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