【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
私は慌てて首を横に振った。
「い、いえ! 私の方こそ助けに来てくれてありがとうございます。和仁さんが来てくれなきゃ、どうなっていたか……」
「怖がらせてすまない」
「あ、あれも誤解で……」
誤解を解こうとする前に、和仁さんはある紙を私に向かって差し出す。
「離婚届」と書かれた文字を見て、私の息は止まりそうになった。
「離婚しよう」
どうして……?
「俺といたらまた君に危害が及ぶかもしれない。これ以上君を巻き込むわけには……」
「離婚して、実家に帰れと言うのですか?」
思わず和仁さんを遮ってしまった。
「実家に戻っても私の居場所はありません。それでも帰れと言うのですか?」
「ここにいるよりは安全だ」
「危険でも帰りたくありませんっ!」
涙が滲み出ていると自覚しながら、それでも泣くまいと必死になっていた。
「私がいたら足手まといかもしれません。でも嫌ですっ」
「君が桜花組の妻である限り、またあんなことになるかもしれない。……俺は所詮あっち側の人間なんだ。また君を怖がらせて傷つけるかもしれない」