【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「平気です! 今日だってびっくりしただけで、怖かったわけじゃないんです。和仁さんのこと怖がるなんてあり得ません」
「ジェシカ……」
「私、和仁さんの傍にいたい……」
溢れ出る涙とともに自分の想いを自覚した。
私は和仁さんのことが好きなんだ。
本当はもうとっくに惹かれていた。
だけど今、改めてはっきりと自覚する。
「和仁さんと離れたくないです……っ」
愛せないのはわかってる。愛して欲しいなんて望まないから。
せめてあなたの傍にいさせて欲しい。
「ジェシカ……っ」
和仁さんは立ち上がり、泣きじゃくる私を抱きしめてくれた。
「……本当に俺でいいのか?」
「っ、和仁さんがいいんです……」
むしろあなたじゃなきゃダメなの。
「離婚なんて言わないで……っ」
「すまない……」
子どものように泣きじゃくる私をずっと優しく抱きしめ続けてくれる。
この温もりが好き。ずっとこのままでいたい。
しばらくして落ち着いた私を少し離し、和仁さんは指で涙を拭ってくれた。
二人の視線が絡み合い、引き寄せられるようにキスをする。
「……ダメだな」
こつん、と額と額がくっつく。
「一度触れると歯止めが効かなくなりそうだ」