【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 ぎゅうっと抱きしめられると、想いが溢れて――嬉しいのに涙が止まらなかった。


「大好き……っ」


 多分私は、和仁さんと初めて会った時から惹かれていた。
 あなたのことを知る度に、周りの人たちを大切にする人柄とさりげない優しさにもっと惹かれた。

 愛されなくてもいい、ただ傍にいられるだけでいいと強がっていても、本音はあなたの本当の妻になりたかった。


「これからもずっと……一緒にいてもいいですか?」
「むしろ離れたいと言っても、もう離してやれそうにない」
「はい……っ」


 絶対に離れないとばかりに強くしがみつき、また強く抱きしめ返してくれることが嬉しかった。
 耳朶や首筋にちゅ、ちゅ、とキスが落とされる。
 くすぐったくて身を捩らせながらも、これだけは言いたいと思った。


「あの、私……はじめて、なんです」
「えっ」
「……二十四にもなって恥ずかしいんですけど」


 初めてはバレる、と聞いたことがある。
 だから隠さずに言ってしまった方がいいと思ったが、やっぱり恥ずかしい。


「引きましたか……?」


 恐る恐る和仁さんの様子を窺おうとしたら、額に優しく口付けられた。


「引かない。むしろ俺でいいのか?」
「……」


 こくりと頷く。
 初めては、和仁さんがいい。


「――優しくする」


 耳元で囁かれ、ゾクゾクという甘い刺激が全身に走った。

 その後和仁さんは一度起き上がると、バサリと上に着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
 見事に腹筋が割れた逞しくも美しい肉体美に、目眩がしそうになる。刺し傷なのか所々腕に傷痕が見受けられるけれど、それさえも美しい。

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