【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
思わずじーーっと見入ってしまうと同時に、ポロッとこぼれ出てしまった。
「……刺青、入れてないんですね」
「え? ああ」
極道の方は体のどこかに必ず刺青を入れているイメージだったし、実際千原さんは左腕、笹部さんは右腕に桜の刺青を入れていた。
普段見えないけど、和仁さんも刺青を入れているのかな? と思っていたのだけれど。
「好きじゃなくてな」
「そうなんですか」
「入れていた方がよかったか?」
「いえ! ない方がよく見えて素敵です!」
――って、私は一体何を言っているのだろう……。
「ふっ、本当に君は面白いな」
「呆れてません……?」
「いや、そういうところが好きなんだ」
そう言うと和仁さんは、熱を孕んだ瞳で私を見下ろし頬に手を添える。
合図に気づいた私が目を閉じると、ゆっくりと唇を重ねられた。
そこからは、ただ和仁さんに身を委ねた。
激しくなる口付けは、私の心を溶かしてゆく。
耳朶を甘噛みされ、首筋にも口付けられ、緋い印が肌に刻まれる。
「んっ、あ……っ」
和仁さんはどこに触れてもまるで割れ物を扱うみたいに優しく触れる。
私を思ってくれているのが伝わって、涙が出そうになる。
「ジェシカ、愛してる」
「っ、私も……」
初めて感じた痛みは、すぐに甘い刺激へと変わり快楽の波に押し流される。
いっぱいいっぱいな私に何度もキスしてくれて、何度も好きだと囁いてくれた。
愛する人と繋がるよろこびと幸福を知ったこの夜のこと、生涯忘れることはないと思った。