【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 ――めちゃくちゃタイプだわ……!!

 そう、はっきり言って和仁さんの顔は私の好みドストライクだった。

 クールな雰囲気に整った容姿。しかも極道の次期組長。
 今ハマっている任侠映画の若頭そのものじゃない……!

 一度も私の方を見ようとしないことをいいことに、ガン見してしまった。
 見れば見る程男前。母の影響を強く受けた私は、純和風な塩顔が好みすぎる。


「……シカ、ジェシカ!」


 父に呼ばれてハッとした。


「何してる。お前も自己紹介しなさい」
「あっはい」


 和仁さんに見惚れていたけど、慌てて頭を下げた。


「葉桜ジェシカと申しますっ」
「この通りアメリカ人とのハーフでして。前妻との子なんです」


 父はそんな風に言ったけど、実際は不倫で母とは結婚してないし、義母が聞いていたらブチギレていただろう。


「ふむ、なんと綺麗なお嬢さんだ」
「ええ、本当にお人形さんみたい」
「よかったな、和仁。こんなに美しい嫁さんにきてもらえて」
「……」


 和仁さんはずっと無言だった。


「無礼な倅ですまないね」
「い、いえ、とんでもない! 吉野組長には大変お世話になり、何とお礼をしてよいか……っ」


 父はずっと組長さんの前でヘコヘコしていた。

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