【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「お疲れ様です」
「はあ……本当に疲れた」
溜息をつきながらシュルリとネクタイをゆるめる和仁さん、色っぽくて素敵。
憂鬱な表情ですらカッコいい。
「……なんで笑ってるんだ」
「え? いや、なんでもないんですっ」
私ったら、ついにやけちゃってた。
疲れてる夫を労うどころかときめいてる妻ってどうなのかしら?
「君を見ていると疲れが飛ぶな」
和仁さんはそう言うと私の腰に腕を回し、抱き寄せる。
「前から思っていたが、君の瞳は綺麗だな」
「え? 汚くないんですか?」
「汚い? どこがだ」
「だって、昔言われたことがあるんです」
母譲りの色素の薄いグレーの瞳は、濁っていて汚いって子どもの頃は馬鹿にされた。
妹の莉々果にも言われたことがある。
「お姉ちゃんの目は濁ってて変な色だよね。青い目とかだったら良かったのにね」と。
「だから私、ずっと自分の目がコンプレックスで……」
「しょうもないやつがいたんだな。僻んでいるだけだから気にするな。誰が何と言おうと、綺麗だ」
和仁さんの言葉はいつも私を優しく包み込んでくれる。
コンプレックスだと思っていたこの瞳も、和仁さんが褒めてくれるのなら好きになれる。
私は私のままでいいと言ってくれることが、たまらなく嬉しい。
「ありがとうございます」
日に日に大好きという想いが強くなっている。
政略結婚だったけれど、こんなにも大好きになれる人が旦那様だなんて、なんて幸せなのだろう。