【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 きっと今が一番幸せだ。今まで生きていた中で一番幸せ。


「……ジェシカ、変に誤解させたくないから言っておく」
「何でしょう?」
「桜花組の傘下に浅雛(あさひな)組という組がいるんだが……」


 浅雛組は傘下の中でも大きな組で、桜花組にとってはなくてはならない存在なのだという。
 浅雛組の先代組長の時代から親交があり、現組長とお義父さまも仲が良いのだそう。


「浅雛組の組長には娘がいてな。昔からの顔見知りではあるんだが、俺が結婚したことを知ったら妻に会わせろと言ってきて」
「あら、そうなのですか」
「あまり君を他のやつらに見せたくないんだが、絶対に会うと聞かなくて」


 和仁さんはややげんなりした表情をしている。


「明日うちに来ると言っているんだ。悪いが会ってやってくれないか」
「わかりました」


 傘下の組の組長令嬢との挨拶。これが桜花組次期組長の妻としての初仕事になる。
 お飾りの妻ではなくなったのだから、しっかり務めを果たさなければならない。


「頑張りますね!」
「そんなに気負わなくていい。話し相手になるだけでいいから。悪いな、あまり君に負担はかけたくないんだが……」
「負担だなんて、嬉しいですよ。妻として認められたみたいで」
「認めるも何もない、俺の妻は君だけだ」


 そう言うと和仁さんはヒョイっと私を抱き上げた。

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