【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「ジェシカさんといったわね。二人きりで話をさせてもらえるかしら?」
「は、はあ……」
「おい、雅。いい加減にしないか」
「大丈夫です、和仁さん。お話するだけですから」
「ジェシカ……」
和仁さんは納得いかない様子で難しい顔をしていたが、雅さんに向かって何かを囁いた。
何だかこの二人、すごく仲が良いんだろうなぁと思った。
私と雅さんは別の客間に移動した。
雅さんは慣れている様子で、客間の場所も把握しているようだ。
私なんてまだ迷いそうになってしまうのに。
それほど何度も出入りしているということなのよね……。
「あの雅さん、何か飲まれますか?」
「いえ、結構よ」
き、気まずい……。
「単刀直入に聞くわ。あなた、和仁のことはどう思ってるの?」
雅さんはクールでエキゾチックな瞳をじっと私に向ける。嘘や誤魔化しは許さない、と言いたげに。
「愛しています」
「政略結婚だったのに?」
「結婚のきっかけはそうでしたけど、今は違います。今は心が通じ合っていると思ってます」
雅さんの目を見てはっきりと答える。