【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
峰さんがそんな風に言ってくださるなんて……。
和仁さんに近い方に褒めていただけると、とても嬉しい。
思わず目頭が熱くなってしまう。
「ずっと和仁と一緒にいる峰くんが……本気でそう思ってるの?」
「ええ、何なら姐さんには感謝してるくらいです。姐さんと結婚して若は変わりましたから」
和仁さんが変わった……?
「若と姐さんなら、これからの桜花組を率いてくれると確信していますよ」
「……っ!」
雅さんは顔を真っ赤にして唇を震わせる。
その表情を見た時、あれ? と思った。
何だか雅さん、峰さんが来てから様子がさっきと違うような?
「いくら雅さんとはいえ、桜花組のことに口出しする権利はないと思うのですけどね」
「わ、私は和仁のことを心配して……っ!」
「お二人が幼少期からの幼馴染であったとしても、傘下の浅雛組が桜花組の本家に意見するのは出過ぎた真似かと」
峰さんは微笑んでいたけど、目は笑っていなかった。
口調も穏やかなようで冷ややかなものがある。
流石の私でさえドキッとしてしまった。
「……っ」
「それでは、自分はこれで失礼しますね」
「あ、ありがとうございました……」
最後は柔和な笑みを浮かべて去っていった。
峰さんはいつも朗らかな人だと思っていたけれど、やっぱり極道なのだなぁと思ってしまった。
これからどうしましょう、と雅さんの方を見て驚いた。
なんと雅さんはポロポロと涙をこぼしていたからだ。