【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「雅さん!? 大丈夫ですか?」
「……っ」
「あ、あの、峰さんの言い方は少しきつく聞こえたかもしれませんが、本当はすごく優しい人で」
「そんなこと、あなたに言われなくてもわかってるわよっ!」
泣きながらも大声をあげる雅さん。
「峰くんはずっと和仁の一番近くにいて、右腕として支えてきたんだから……和仁の影に隠れがちだけど、冷静かつ聡明で交渉にも長けていて。軟弱に見られがちだけど、和仁に負けず劣らず強いのよ!」
そう言ってわんわん泣く雅さんを見ながら、閃いたことがあった。
もしかして雅さん、訪ねてきた本当の理由は――
「峰さんのこと、好きなのですか?」
「!!」
耳まで真っ赤にする顔を見て、確信した。
ああ、やっぱりそうなんだ。
「〜〜っ、和仁が結婚したことも驚いたけど、それ以上に峰くんがやたらあなたを褒めるのよっ。嬉しそうに、ニコニコしながら! だからあなたの顔を見てやりたかったのっ」
真っ赤になりながら涙を浮かべる彼女を見て、なんて可愛らしいのだろうと思った。
彼女はただ必死だったんだ。
好きな人に振り向いて欲しくて。
「雅さん、素敵な方なんですね」
「どこが!? 私のことバカにしてるの!?」
「いいえ、一生懸命に恋をしている姿が素敵です。好きな人を思っていっぱいいっぱいになってしまう気持ち、すごくわかります」
「わかるって、和仁とは政略結婚だったのに?」
「私、和仁さんに一目惚れだったんです」