【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
第七話 夫婦の形
何だかんだで雅さんとはお友達になり、一緒にお茶する仲になった。
雅さんは自分で美容系の会社を経営していて、まだ事業は始めたばかりだけれど楽しくも忙しく過ごしているそうだ。
「雅さんって素敵ですよね。カッコよくて憧れます」
「そうか?」
「あの和仁さん、私も何かやりたいです。組のこととか、何かお手伝いできることが……」
「必要ない」
和仁さんはピシャリと言い切った。
「君は気にしなくていい。大丈夫だ」
「っ、そうですか……」
前よりは心の距離が近づいたと思っていた。
毎日愛されて大事にされていると実感できる。
でも、仕事のことはどうしても話してくれない。
少しくらい何かできたらと思ったのだけれど、迷惑なのかしら……。
雅さんが言っていたことは、今でも胸に刺さっている。彼女の言っていたことは最もだと思う。
だからこそ、私も何かできることがしたいのに。
「はあ…………」
「姐さん、車の準備できました」
「あ、ありがとうございます」
笹部さんが車を出してくれて、華道教室へ向かう。
どこへ出かける時は必ず送ってくれる。
一度断ったこともあるけど、和仁さんに言いつけられてるからって言われちゃったのよね。
買い物ですら一人で行くなって言われてるし……もしかして私、信用されてないのかしら。
心配してくれてる気持ちは嬉しいけど、ちょっぴり寂しい。