【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 車の中でしょんぼりしていると、急に車が急停車した。


「きゃっ」
「申し訳ありません、姐さん。なんかあったようで」


 窓で外を見てみると、パトカーが止まっているのが見える。何か事件があったのだろうか。
 道が塞がっているため遠回りしないといけないようだ。


「すみません、姐さん。少し様子を見てきてもいいですか?」
「はい」


 そう言うと、笹部さんは車を出て様子を見に行った。
 こういう時、何が起きたのか把握するのも桜花組の組員として、なのだろうか。
 やっぱり私は何も知らないなぁと思った。

 程なくして笹部さんが帰ってきた。
 だけどその隣には見知らぬ男性が同行している。

 ビシッとスーツを着こなしたその人は、刑事さんなのだろうか。何故か真っ直ぐこちらへやってきたかと思うと、窓ガラスをトントンとノックした。


「初めまして。あなたが和仁の奥様ですか?」
「え? はい、そうですが……」
「あなたが! ずっとお会いしたいと思っていました!」


 パアッと表情を明るくさせ、にこやかな笑みを浮かべている。
 和仁さんのお知り合い?

 私が戸惑っていると、その隣から笹部さんが口を挟む。


信士(しんじ)さん、姐さんを困らせないでください……」
「おっと、失礼。申し遅れました、私は満咲(みつさき)信士(しんじ)といいます。和仁の友人です」

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