【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
戸惑いが隠せない私のことを気にしているのかいないのか、信士さんはにこやかに話しかける。
「妻は家元の娘で新進気鋭の華道家として活動中でしてね。なかなか教室に顔を出すことがなく、あなたに会えないことをずっと残念に思っていたんです」
「そうだったのですか」
「今日は教室に行くと言っていたので、喜ぶと思いますよ!」
信士さんはとても上機嫌に笑っている。
和仁さんとの関係性を尋ねる前に教室へ到着した。
信士さんは関係者にも顔が割れているのか顔パス(?)でずんずん進んでいく。
「蘭!」
信士さんはある女性に呼びかけた。
素人目でもわかるとても見事な花を生けている女性は、呼ばれて振り返る。
「あなた、どうしてここへ?」
「蘭に会わせたい人がいるんだ。こちら、吉野ジェシカさん。和仁の奥さんだよ」
「まあ! あなたが!?」
「あ、えっと、吉野ジェシカです」
「満咲の妻の蘭です。お会いできて嬉しいですわ」
蘭さんはその名の通り、とても上品で華やかな女性だった。
是非一緒にお茶をしましょう! と誘われ、満足に返事することなく教室近くのカフェに連れられる。
何だかこの二人、ご夫婦揃って強引なのね……。