【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


「うちの教室に通ってくださっていると聞いた時からずっとお会いしたかったのに、なかなかタイミングが合わなくて。ご挨拶が遅れてごめんなさい」
「いえいえ、とんでもないです」
「和仁のやつめ、こんなに綺麗な嫁さんをもらっていたとは!」
「本当に。お人形さんみたいだわ、ジェシカさん」
「は、はあ……」


 お二人とも初対面とは思えない程フレンドリーだ。
 和仁さんとは全然タイプが違うのに、親しいのが何だか意外に思った。

 改めて自己紹介してもらったところによると、信士さんと和仁さんは小学校からの友人らしい。
 蘭さんのお母さんとお義母さまが昔からのお知り合いとのことで、家族ぐるみで親交があるのだとか。


「それなのにいつの間にか結婚してた上に事後報告だぞ。全く薄情なやつだ」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません……!」
「ああ、ジェシカさんは悪くないのよ。この人ったら拗ねてるだけなんだから」
「ジェシカさん、今度是非我が家に遊びに来てください。ささやかですが、結婚祝いをさせていただきたい」
「えっそんな、いいのですか?」
「是非いらして! 何か苦手な食べ物はありますか?」
「あ、いえ……」
「信士!」


 ハッとして振り返ると、ものすごく不機嫌そうな和仁さんが仁王立ちしていた。
 その後ろには困った表情の笹部さんもいる。


「何だ、和仁。来てたのか」
「来てたのかじゃない。勝手にジェシカを連れ回すな」
「お前が紹介してくれないからだろ」

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