【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
どの作品も花の良さを活かした大胆な作品ばかりで、自分にはとてもできないと溜息が漏れ出る。
「よかったら一緒に生けてみません?」
「えっ! 私なんてまだまだで」
「上手い下手なんて関係ありませんわ。それにジェシカさん、どんどん上達してるって母が褒めてましたよ」
「ほ、本当ですか」
褒められてちょっとソワソワしながら、蘭さんが普段華道をする時に使っている和室に入らせていただいた。
結婚する時、一室まるまる華道のための部屋として信士さんがリフォームしてくれたらしい。
蘭さんの前で花を生けるのはとても緊張したけど、自由に生けてみて欲しいと言われてとりあえず思うがままに生けてみた。
「できました」
「あら、とても繊細で素敵ね。でもジェシカさん、もしかして何か悩んでる?」
「え?」
そう言われて、先生にも指摘されたことを思い出す。
花に私の心が表れているのだと。
「悩んでるというか、私なりに組のためにできることがしたいんですけど、和仁さんに必要ないと言われてしまって。それが少し寂しくて……」
「そう……」
「不満とかではないんですけど、もっと自分にできることがしたいんです」
雅さんや蘭さんと知り合って余計にそう思うようになった。
二人とも立派に自立して、自分の力を極めて進んでいる姿がとても眩しく思えた。