【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


「私たち、政略結婚だったんです。正直望まれて結婚したわけじゃなかったし、最初は家のことだけやろうと思ってました。仕事のことには口出しすべきでないと思ってたんです。でも今は、少しでも和仁さんや組のためにできることがしたい……妻として支えたいんです」
「ジェシカさん、和仁さんのことが大好きなのね」


 そう言われて思わずボッと顔が真っ赤になる。


「……大好きです」


 我ながら年甲斐もなく恋をしていて恥ずかしい。
 恋愛経験は多くないけれど、別に初恋でもないのに。

 でもこんなに誰かを好きになることなんてなかったし、ある意味では初恋なのかもしれない。


「……和仁さんがうちの人にジェシカさんを紹介したがらなかった理由がわかった気がしたわ」
「え?」
「これは夫が言っていたことなのだけれど、和仁さんってわかりにくいけどとても愛情深い人なんですって」
「それは、わかる気がします」
「だからきっと、ジェシカさんのことを大切に思っているだけなんじゃないかしら。組の仕事は危険なことも多いし、あまり関わって欲しくないだけよ」
「そう、ですよね……」


 それでも何かできることはないのかなぁと思ってしまうのは、我儘なのだろうか。


「もう十分支えになれてると思うけどね」
「そうなのでしょうか」
「でも、その気持ちを素直にぶつけてみてもいいんじゃない? 夫婦なんだから」

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