【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
素直に、気持ちを……。
確かに自分の気持ちを全部は言えてないかもしれない。
嫌われてしまったらどうしようって思って、不安になるから。
でも夫婦なんだもの、何でも言い合えるようにならないとダメだ。
「私たちなんてしょっちゅう言い合いしてるわよ」
「そうなんですか!?」
「ええ、話し合う時はとことん話し合うって決めてるの。でもそれがスッキリするのよね」
「何だか羨ましいです……」
「大丈夫よ、夫婦には色んな形があるんだから。ジェシカさんたちはきっと、これからなのね」
確かに私たちは順序が違った。
恋をしてから結婚するのではなく、結婚してから恋をした。
恋人同士だったわけでもないし、何なら今が正にその期間なのかもしれない。
それに私は、まだまだ和仁さんのことを全部知っているわけじゃない。
「あの、こんなこと蘭さんに話していいのかわかりませんが」
私は以前染井一家の組員に拉致されたことを話した。
蘭さんは信士さん伝で少し聞いていたらしく、「怖い思いをしたわね」と優しく気遣ってくれた。
「あの人、染井の別の支部へ飛ばされたみたい。本来はクビになるところだけど、夫が取り成したそうよ」
「そうなんですか」
「はっきり言って規約違反ではあるんだけれど、一応こういう世界だから野放しにせず、管理下に置くことにしたみたいね」
私はその辺りのこと、何も聞かされていなかった。
ただもう大丈夫だから安心していいと、優しく抱きしめてもらった。
それは嬉しかったけど、でも。
「蘭さん、どうして桜花組と染井一家は対立してるんですか?」