【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
茶髪でふわふわした猫っ毛の若い男性には見覚えがあった。
「彪冴くん!?」
「ジェシカじゃん! 久しぶりだなぁ!」
彼は梅堂彪冴くん。
大学時代同じゼミだった数少ない友人だ。
「久しぶりね! 大学以来じゃない?」
「だな! 元気してたか?」
「ええ、元気よ。彪冴くんは今何してるの?」
「日用品メーカーの営業。ここも外回りで寄ったんだ」
「へーすごい!」
人懐っこくてコミュ力抜群の彪冴くんなら営業も向いてるんだろうなぁ。
「ジェシカは何してんの?」
「あ、私は……実は結婚したの」
「ええっ!? マジで!? おめでとう!!」
「ありがとう」
そういえば結婚のこと、元職場以外で話すの初めてかも。結婚式は身内だけだったし。
「ゼミの面子で一番じゃね? 誰が一番に結婚するかって話してたけど、ジェシカだったか〜」
「そうみたいね」
「苗字何になったの?」
「吉野よ」
「吉野……?」
彪冴くんは笑顔が消えて、驚いたように私を見つめた。
「ええ、吉野ジェシカになったの」