【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 するとスマホが鳴った。画面に表示された名前は「彪冴くん」。


「もしもし彪冴くん?」
《もしもし、ジェシカ? 昼間はサンキューな》
「お礼を言うのはこっちよ。サボテンありがとうね。かわいくてすごく嬉しい」
《いやいや! つーかジェシカが植物に興味あったの知らなかったなぁ》
「最近ハマったの! それより彪冴くん、何か用だった?」
《あ、ごめん。急に電話して悪かったな。ジェシカに聞きたくてさ》
「うん、何?」
《ジェシカの旦那さんって何してる人?》
「えっ」


 和仁さんの仕事? 極道なんて言えないわよね!?


「……会社経営かな」


 悩んだ挙句そう答えた。
 極道は自営業? だと思うから遠からず……のはず。


《マジで!? 実は取引先に吉野って社長がいてさ! もしかしてその人!? と思って》
「え? えーーと……」
《名前はカズトっていうんだけど!》


 どうしよう、本当のことを言うべきなのかと迷っていたら全然別人の話でホッと安堵する。


「そうなんだ。でも主人の名前は和仁だから違うわね」
《あ〜〜惜しかったな! 別人かぁ。悪りぃジェシカ、ありがとな!》
「ううん」


 ちょっとびっくりしたけど、何とか誤魔化せて良かったかな……?
 それにしても吉野カズトなんてニアミスね。

 桜花組は警察公認で本当は治安を守るのが仕事だけど、それは一部の関係者しか知らないことだし。
 本当のことが言えないのは少し歯痒い。

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