【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

第二話 お飾りの妻



 吉野家の邸宅は、かなり大きくて広々とした日本家屋だ。
 和室がほとんどだけど、洋室もあるなど内装は見た目に反してモダンな造りでもある。
 棟がいくつかあり、その中の一棟が私と和仁さんの生活する家として与えられた。

 こんなに立派なお屋敷に住まわせていただくなんて、いいのかしらと思った。
 更にそれだけではなかった。


(あね)さん! 今日から我ら一同、誠心誠意姐さんにお仕えする所存。よろしくお願いします!!」
「よろしくお願いしやす!!」
「まあ」


 和仁さんの舎弟の皆さんが一堂に会し、私に向かって深々と跪いてくださった時は胸が高鳴ってしまった。

(正に映画の中の世界だわ……!)

 その中でも私の世話係として就いてくれるのが、千原(ちはら)さんと笹部(ささべ)さん。
 千原さんは両耳、口にもピアスを空けたチワワみたいにかわいい人。
 笹部さんはスポーツ刈りで大柄なドーベルマンといった雰囲気だ。

 他の皆さんも顔は怖そうだけど、何だかとても悪い人たちには思えない。


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