【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
その後なんやかんやして起き上がり、朝食の準備を進める。
和仁さんは着替えてネクタイを締めながら尋ねた。
「そういえば、サボテンが置いてあったな」
「あっ、気づいてくれました!? これ友達がプレゼントしてくれたんです! かわいいですよね!」
「友達が?」
「はい、大学時代同じゼミだったんです。偶然会ったら結婚祝いにって」
「そうか、良かったな」
「彼、今日用品メーカーの営業をしてるらしいんですけど、取引先の社長さんに吉野カズトさんって方がいるそうですよ。和仁さんとお名前が似ててびっくりしました!」
「……彼?」
急に和仁さんの目の色が変わるのがわかり、ハッとした。
「男なのか?」
「あ、はい……」
「……そうか」
和仁さんの表情に変化はない。
だけど何となく、本当に何となくだけど少し声音が不機嫌そうになったと感じた。
「あ、あの、大学のゼミのメンバーはみんな仲良くて……その中の一人だったんです。だから、特別に仲が良いというわけでは……」
なんだか言い訳しているみたい。
「別に気にしてない」
「あ、そうですよね……」
もしかして気にするかな? と思ってけれど、そんなことをいちいち気にするような人じゃないわよね……。
そう思っていたけれど。