【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
「でも、指輪は絶対に外さないように」
「え?」
「俺の妻だとわかるようにしておかないとダメだろう」
「……!」
左手の薬指に嵌めた指輪をキュッと握りしめる。
「はい、外しません!」
思わずにやけてしまう私の頬に和仁さんは触れるだけのキスを落とした。
*
今日は掃除がてら書斎の整理をすることにした。
お義父様の趣味でもあるらしく、書斎にはたくさんの書物がある。
こうやってお部屋に入ることを許されると、私も家族の一員に入れてもらえてるんだなぁと思って嬉しくなる。
積み上がった本を一冊ずつ丁寧に整理していたら、何かの本の間から写真が一枚滑り落ちた。
「あら……?」
写真に写っていたのは、今よりも若い和仁さんだった。
十代か二十歳くらいかしら? この時からとても整った顔立ちをしていてイケメンすぎる。
その隣に映っているのは、セーラー服を着た黒髪セミロングの女の子。
和仁さんは堅い表情をしているけれど、彼女は和仁さんの腕を組んで笑顔でピースしている。
「これは……誰?」
その時、廊下からドタドタという騒がしい足音が聞こえる。