【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 和仁さんが呼びかけると、二人はピンと背筋を伸ばす。


「「はい!」」
「ジェシカを頼む」
「「はっ!」」


 深々と頭を下げる千原さんと笹部さん。
 峰さんに支えられながら立ち上がり、和仁さんは病院へと向かう。

 追いかけようとしたけど、千原さんたちに止められてしまった。


「っ、和仁さん……っ」


 ボロボロと泣きじゃくりながら、病院へ向かう車を見送ることしかできなかった――。

 私は部屋にこもり、一人泣き続ける。


「うっ、うっ……」


 コンコンというドアのノック音がして、千原さんが訪ねてきてくれた。


「姐さん、飯食べないんすか?」
「いらない……」
「姐さん……」


 食欲なんてあるわけない。
 和仁さんのことが心配でたまらない。

 しばらくして再びコンコンというノック音が聞こえた。


「すんません、姐さん。姐さんに謝りたいって奴がいるっす」
「姐さんすみません! 兄貴が撃たれたのは俺のせいで……っ」


 ドア越しにとても申し訳なさそうに叫ぶ声が聞こえた。


「兄貴は俺のこと庇ったんです……っ。でなきゃ兄貴が怪我なんてするわけねぇ! 俺のせいですみません!!」
「……」

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