【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
ガチャリとドアを開けると、ドアの前には笹部さんとスキンヘッドの組員さんが立っていた。
二人とも大柄で体格が良いのに、何故かとても小さく見える。
「姐さん……」
「謝らないで……きっと和仁さんは次期組長として当然のことをしたんだと思うから」
そう、きっと仲間を守るのも和仁さんの使命なのだと思う。
「姐さん! 兄貴は姐さんを怒ったんじゃねぇ! 姐さんのことが心配で!」
「それもわかってるわ……」
和仁さんは常に私の身の安全を考えてくれている。
それはわかるけど、私が思っていた以上に極道という世界のことをわかってなかった……。
命の危機とこんなにも隣り合わせだったなんて。
夜が更けても食欲が出ず、ずっと自室に引きこもっていた。
散々泣いて泣き腫らし、きっと酷い顔をしていると思う。
だけど顔を洗う気力もない……。
「姐さん!! 兄貴帰ってきました!!」
「!!」
その声を聞いてハッとして飛び起き、急いで玄関まで駆け寄る。
「和仁さんっ!!」
「ジェシカ……」
腕に包帯を巻いている和仁さんの姿を見て、枯れたはずの涙が再び溢れ出る。