【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。


 私は勢いよく駆け寄って和仁さんに抱きついた。


「和仁さん!! 無事でよかった……っ」
「心配かけてすまなかった」


 和仁さんは片腕で私のことを抱きしめてくれた。

 しばらく玄関でそうしていたけど、二人で寝室に戻る。
 和仁さんの着替えを手伝いながら、包帯が巻かれた腕を見た。


「腕、痛みますか?」
「大したことない、擦り傷だ。医者が大袈裟なだけだよ」
「でも撃たれたんでしょう?」
「心配するな。急所は外してるから本当に大したことないんだ」


 和仁さんは私の頭をポンと優しく撫でる。


「……ジェシカ、すまないがしばらく帰れなくなる」
「え……」
「君もなるべく外出は控えてくれ。外出するなら必ず千原か笹部を連れて行くんだ」
「和仁さんは大丈夫なんですか?」
「大丈夫だ。心配するな」
「〜〜っ」
「そんな顔しなくていい。必ず無事に帰るから」


 そう言って抱きしめてくれたけど、私の心は不安でいっぱいだ。


「……絶対無事で帰ってきて」


 もう私はあなたがいない生活なんて考えられない。
 離れたくない、ずっと一緒にいたい。

 だから神様、いるのならどうか和仁さんを守ってください――。

 祈ることしかできない自分が歯痒くて、怖くて不安で胸が押し潰されそうな夜だった。

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