【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
それから数日が過ぎた。
和仁さんはなかなか帰って来なかった。最初は毎日連絡をくれていたけど、今は音沙汰がない。
花を生けながら何度もスマホを見やるが、やっぱり連絡はない。
何が起きているのかみんな教えてくれないし……お願いだから、無事でいて。
ブブ……とスマホが鳴った。ハッとして画面を見ると、「非通知」と表示されていた。
一体誰かしら?
怖かったけど何となく気になり、恐る恐る電話に出た。
「もしもし……?」
《ジェシカか……? 俺だ、和仁だ》
「和仁さん!?」
ガタッと立ち上がる。
「今どこにいるんですか!?」
《すまない、詳しくは言えないんだ》
「何があったの!?」
《ジェシカ、頼む。お前にしか頼めない》
「何!? 私にできることならなんでもします!」
《俺が今から言う場所に来てくれないか? 誰にも気づかれずに……》
「一人で? でも和仁さんが一人で外出するなって」
どこか心の片隅でざわつくものがあったし、何かが一瞬引っかかる。