【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
《イレギュラーだ。頼む、誰にも見つからないように一人で来てくれ》
「わ、わかりました」
だけど、何か緊急事態なのだと思った私はそれ以上考えることはしなかった。
何より私にしか頼めないと言われたことで、私がやらなければならないという使命感で頭がいっぱいになる。
電話を切るとすぐに支度をした。
誰にも見つからないように気をつけながら、裏口から外に出る。
指定されたのはこの先の公園だったわね。
こんな夜に何があったのかしら?
不安と心配に駆られながら、誰もいない暗い公園を訪れる。
街灯が怪しく光っている。キョロキョロと辺りを見回し、和仁さんを探した。
「和仁さん? どこにいるの?」
「ジェシカ!」
「! 和仁さん!?」
ハッとして振り返る。だけど、そこにいたのは和仁さんではなかった。
「ジェシカじゃん!どうしたんだ?」
スーツを着た彪冴くんが笑顔で片手を挙げている。
「彪冴くん……? どうして?」
「見てわからない? 仕事の帰りだよ」
「あ、そっか」
待って、ここに彪冴くんがいるのはマズイんじゃない!?
何が起きてるかわからないけど、彪冴くんが巻き込まれるかもしれない……!
「彪冴くん! ここから離れて!」
「え?」
「ここは危ないかもしれないの!」
「どういうこと?」
「それは……」