【完全版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
どうしよう、なんて説明すればいいのかしら。
「……」
答えられずに俯くと、彪冴くんが怪訝そうに尋ねる。
「どうしたんだ? てゆーかなんでジェシカはここにいるんだよ?」
「えっと……」
「もしかして、旦那さんと待ち合わせてた?」
「え!?」
どうしてそのことを……。
「ごめん、ジェシカ……あの男は来ないよ」
「え……!?」
彪冴くんは笑顔だった。
だけど街灯に照らされ、背筋が凍るような不気味さがある。
咄嗟に後退ろうとして、ジャキという銃を構える音がした。
どこからか現れたのか、二人の男が私に向かって銃口を突き付ける。
一瞬にして凍り付いた私はその場に動けなくなった。
どういうこと……?
一体何が起きてるの……!?
「ごめんな、ジェシカ……」
スーツの中から何かを取り出そうとする彪冴くん。
私の心臓がドクドクと脈打つ。
「騙してごめん」
全く悪びれる様子のない笑顔で、私に銃口を向けてきた。
どういうことなの……!?
理解ができず、ただ目の前の友人を凝視するしかできない。
いや、友人“だった”というべきなのだろうか――。