華道の獅子は甘く初花を愛でる
9 華道教室
そして、華道教室に入ると、約30人ほどの生徒さんが長テーブルに2箇所設置された椅子にそれぞれ座っていた。
風早さんが入ると黄色い歓声が起きた。
まぁ…ね。
かっこいいよね。
華道の家元などと聞くと白髪混じりのおじさまをつい想像してしまうが、風早さんはまだ20代後半あたりだろう。
切れ長の瞳に、黒の艶めく髪はストレートでくせ毛一本無い。
鼻筋は通っているし、唇はやや薄いが、十分に整っている。
そして、私はドアのそばの目立たない所に立ち、風早さんの挨拶を聞くことにした。
「こんにちは、みなさん。
今日は風早流の華道教室にお越しいただき、誠にありがとうございます。
私は風早流の家元の風早志道と申します。
まだまだ、華道に精進している身ではございますが、みなさまとここで有意義な時間を持てる事を願って挨拶とさせていただきます。
さて、まず、風早流の華道とは…」
一通りの挨拶が終わり、風早さんは風早流の特徴などについて語り始めた。
うーん、退屈だわ…
華道なんて、全然分からないし…
他の流派とどこがどう違うのか…?
きっと一生分からない気がする…
そんな説明が10分ほどあった後、いよいよ生け花が始まった。
みんな、独創的な生け花をつくっている。
こうしてみると、やはり風早さんは一般人とは一線を画す腕なのだな、とよく分かる。
あー、おばさん、ひまわりとアジサイなんて合うわけ無いじゃん…
お姉さん、枝が自由過ぎませんか…?
心の中でツッコミを入れつつ、私は退屈していた。
「あのー…?
あの!
そこの着物の人!」
若い女性がイラついた様子で私に声をかけた。
「は、はい!」
私は勢いよく答えた。
「あの、あなたも風早流の人でしょう?
水揚げの仕方がよく分からないんですけど…
教えてくれません?」
水揚げ…?
みず…あげ…?
水から上げればいいのかな?
「えーと…
あの、私…
水から上げるんですかね???」
「え…?
あなた、風早流の人じゃ無いの…?」
超不審そうな目で見られる私。
「失礼、青葉さん。
彼女はまだ新入りでして。
勉強の為にこの場に居るのですよ。」
風早さんがフォローにサッと入ってくれた。
そんなこんなで、皆様、凄い物(はっきり言うとセンス無し!)が出来上がり、各々満足気に帰って行かれた…
「風早さん、私にする事なんて無いじゃないですか!
アシスタントって言ったくせに!」
私は文句を言う。
「ふん…
ただ、そばに居て欲しかったんだよ…
何でだろうな、初花、お前と居ると、何でも出来る気がするんだ。
今までは、華道教室でクソセンスの無い生徒に教えるなんて、最悪だと思っていた。
だけど…」
「だけど…?」
「面白かったよ。
今度は、水揚げの意味くらい調べとけよ。」
風早さんは思い出しておかしそうに笑った。
んもぅ!
風早さんが入ると黄色い歓声が起きた。
まぁ…ね。
かっこいいよね。
華道の家元などと聞くと白髪混じりのおじさまをつい想像してしまうが、風早さんはまだ20代後半あたりだろう。
切れ長の瞳に、黒の艶めく髪はストレートでくせ毛一本無い。
鼻筋は通っているし、唇はやや薄いが、十分に整っている。
そして、私はドアのそばの目立たない所に立ち、風早さんの挨拶を聞くことにした。
「こんにちは、みなさん。
今日は風早流の華道教室にお越しいただき、誠にありがとうございます。
私は風早流の家元の風早志道と申します。
まだまだ、華道に精進している身ではございますが、みなさまとここで有意義な時間を持てる事を願って挨拶とさせていただきます。
さて、まず、風早流の華道とは…」
一通りの挨拶が終わり、風早さんは風早流の特徴などについて語り始めた。
うーん、退屈だわ…
華道なんて、全然分からないし…
他の流派とどこがどう違うのか…?
きっと一生分からない気がする…
そんな説明が10分ほどあった後、いよいよ生け花が始まった。
みんな、独創的な生け花をつくっている。
こうしてみると、やはり風早さんは一般人とは一線を画す腕なのだな、とよく分かる。
あー、おばさん、ひまわりとアジサイなんて合うわけ無いじゃん…
お姉さん、枝が自由過ぎませんか…?
心の中でツッコミを入れつつ、私は退屈していた。
「あのー…?
あの!
そこの着物の人!」
若い女性がイラついた様子で私に声をかけた。
「は、はい!」
私は勢いよく答えた。
「あの、あなたも風早流の人でしょう?
水揚げの仕方がよく分からないんですけど…
教えてくれません?」
水揚げ…?
みず…あげ…?
水から上げればいいのかな?
「えーと…
あの、私…
水から上げるんですかね???」
「え…?
あなた、風早流の人じゃ無いの…?」
超不審そうな目で見られる私。
「失礼、青葉さん。
彼女はまだ新入りでして。
勉強の為にこの場に居るのですよ。」
風早さんがフォローにサッと入ってくれた。
そんなこんなで、皆様、凄い物(はっきり言うとセンス無し!)が出来上がり、各々満足気に帰って行かれた…
「風早さん、私にする事なんて無いじゃないですか!
アシスタントって言ったくせに!」
私は文句を言う。
「ふん…
ただ、そばに居て欲しかったんだよ…
何でだろうな、初花、お前と居ると、何でも出来る気がするんだ。
今までは、華道教室でクソセンスの無い生徒に教えるなんて、最悪だと思っていた。
だけど…」
「だけど…?」
「面白かったよ。
今度は、水揚げの意味くらい調べとけよ。」
風早さんは思い出しておかしそうに笑った。
んもぅ!
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