もう隠すのは辞めにします!
和希はつい先週に、久々に友人と会う機会があったのだが、すっかりしょげきってしまっている様子がバレてしまい、心配し過ぎた友人に理由を聞かせる羽目になったのだ。友人はじっと話をきいていたが、そのうちに朱里は浮気をしているのではないかという話になった。和希は薄々気づいていたものの、改めて友人に指摘されてさらに愕然としてしまった。弁護士まで紹介されたときは流石に驚いてしまったが、それだけ友人に心配をかけてしまったことに、和希は消沈していた。

(まずは証拠集めなんだけど……やっぱりスマホとかの中身を見た方がいいのかな。見るだけじゃなくてスクショしないと駄目だっけ……あとは興信所とかにも頼む方法もあったな。流石に料金が厳しいからそれはしないにしても、それなら尾行するしか手はないんだよね……そんなことしたら逆に僕が捕まってしまいそうだけども)

和希はリビングの棚に立てかけている写真を見る。時を経るごとに、段々と若返る朱里と和希が幸せ一杯に笑顔を振りまいている。二年前の結婚式の時の写真だ。

(そうだ。朱里が帰ってきた時に、持って帰ってきた物を押収するというか、見せて貰おうかな。いつも買ってきた物を見せてくれないけど、中身を見せてくれないなら黒判定しないと……本屋の袋を下げてるけど、必ずしも本が入ってるとは限らないし)

和希は再び本を読んでいたが、朱里の不審な行動がぐるぐると脳を巡り、いくら振り払ったとてべったりと心に貼り付いてくる。それはまるでどす黒いコールタールのように、拭っても拭ってもすぐに心臓を覆ってしまうのだ。

(気は進まないけど……尾行するか。何となく朱里の行ってる場所は予想がつくし。あの袋の書店は確か繁華街の近くにあったよね)

和希は本を閉じると、お気に入りのハンチング帽を被り、掛けているメガネを、予備で持ってる太い黒縁の、おしゃれメガネというものに変え、ワイシャツにくすんだオリーブ色のネクタイを締め、その上から茶色地の白い大きめなチェックが入ったジャケットを羽織り、同じ柄のスラックスという出で立ちになり、最寄り駅へと向かった。
< 2 / 7 >

この作品をシェア

pagetop