レディキラーを君に
『今宵も君を想う』
ソルティドッグ
ふと、意識が浮上する。
部屋は真っ暗で、私自身しっかり寝た時の爽快さと気怠さが入り混じった感覚がしていたから、それなりの時間眠っていた事は体感で分かった。
「肇さん・・・」
暗闇が寂しくて、ついさっきまで私の事を好きなようにしていた彼の事を呼んでみるけれど、彼はいない。
BARで口付けをして、あれよあれよと2階の居室へ連れ込まれてめくるめく一夜を過ごした。
めくるめく、というか、もはや私が知っている行為とは別物のような、とんでもない行為をした気がする。
それから思いっきり告白させられたし、なんなら私の気持ちは恐らくバレていたんじゃないかという気がした。晴れて恋人になった・・・のだと思う。だって昼間にしていたのは完全なおうちデートだったし、こう・・・あの・・・行為の合間合間に「好き」って言われたし・・・。
一夜明け、寝起きからあれこれあったのだけれど、今はもう日もすっかりく暮れた時間だ。
そもそもこんな時間帯にベッドで目覚めているのは、完全に肇さんのせいだ。ベットで寝ころびながら映画を観ていたはずが、ふらちな手が伸びて来て、あれよあれよとベッドに沈められたのだ。
・・・そういえば、お店開きに行くから起きたら連絡してって、意識が途絶える直前に言われてような気がする。
のそりと起き上がりベットから降りて、リビングへと向かう。ペタペタと裸足でフローリングの上を歩く音がやけに響いて聞こえた。
リビング側は明かりをつけていてくれたみたいで、そのことにほっと息をつく。別に暗闇が苦手ということもないけれど、慣れない部屋に一人きりで、しかも真っ暗だったりしたら、なんだかちょっとざわざわした気持ちになってしまう。
昼間に一緒に食事をしたテーブルの上には、新しいお皿とメモ書きが置かれていた。お皿にはシチューが盛り付けられていて、ラップで覆われている。
”おはよう。
シチュー作っておいたから、お腹すいたら食べて
お店は何が何でも0時に閉める
それまで何しててくれてもいいんだけど
もしよかったらお酒飲みに下に来てくれたら
すごく嬉しい
服は乾いたからソファに置いておくね
肇”
唇がにまにまと笑ってしまうのを抑えられない。別に一人きりだしどんな顔をしていてもいいとは思うんだけど、多分めちゃくちゃだらしない顔しているだろうから抑えたい。
私のためにシチュー作ってくれたのもきゅんきゅんするけど、絶対にお店閉めるって言ってくれているのも、お酒飲みに来てくれたらうれしいって言ってくれるのも、全部が全部、めちゃくちゃきゅんきゅんする。
だって一緒にいたいってことでしょう?
そういうことでいいんだよね?
――――私も一緒にいたいな。
ああでも、もしお店混雑してたら行っても邪魔になっちゃうよな。とりあえず、メッセージ送ってみよう。