結構ダークな話 ※タイトルはまだ未定です
Prologue
side 美琴
私の名前は美琴。
苗字は?と聞かれる時もある。
無いわけではない。確か、いちのせ、だった気がする。
5歳の時に両親が亡くなり、児童養護施設で暮らしてたけど、
施設にいるのがめんどくさくなって、中3の時に、施設を出た。
夜中にこっそり抜け出した後、初めて会った人間は酔っ払った大学生2人。
いわゆる「ナンパ」をされて、ムカついたから一発殴ったところ、相手も乗り気で、そのまま街の路地裏でケンカした。
苦戦はしたけど5分ちょいで2人とも気を失ったみたいだったし、私って案外ケンカ強い?って思ったんだ。
ケンカして財布をあさって1000円くらいパクって、コンビニで鮭のおにぎりを買う。
夜は路地裏で仮眠をとり、たまにカプセルホテルでシャワーを浴びる。
こんな生活をし始めてもう何ヶ月経ったのだろうか。
最近では夜に人を見かけただけで、殴りかかる。私の心の中には、同情や憐れみという気持ちは消えてしまった。
夜の街を歩いている時、たまにカップルを見かけると、ふと思う。
彼らは愛されているのだと。
施設にいた時の暮らしは、何も不自由はなかった。
衣食住は確保されていたし、学校の行事も職員の人が総出で応援に来てくれたし、恵まれているんだという実感はあった。
それでも、親が来ている同級生の子を見ると羨ましくなるのは、仕方がなかった。
私にも親がいたら、いや、私のことを心から愛してくれる人がいたら…。
その時からだろうか。私の心から感情というものが消え去ったのは。
何をしても心が動かない。周りの子に合わせて口角を上げることはあっても、私自身は笑うことを忘れているようだった。
小3の時、友達の男の子に言われたことを今でも鮮明に覚えている。
「美琴ちゃんは、なんでそんなに笑わないの?
綺麗な人形みたい」
言葉が放たれた瞬間、ショックを受けた。彼の目に映る私は笑っていないのだと気づいた途端、その子のことが怖くなった。
それ以来、小学校を卒業して会わなくなるまで、私は彼を避けた。
それっきり、その子には会っていない。