最強アイドルは普通な私の特別を知っている

アイドルとコールの練習



〇ライブ会場、ステージ上
1、2、3
1~3コマすべてを使い、大ゴマでアイドル衣装を纏った颯斗がキラキラと輝きながら歌い舞う様子を描く。

舞野「これが、最強アイドルの颯斗さん…!!」
舞野は観客席におり、隣にはタジア。

第2話の続きからスタート
〇学校

舞野「颯斗さんが経歴不明ってどういうことですか?」
歌恋「文字通りですわ。彼がわたくしの家の事務所に入るまでの一切の来歴が不明なのです」

舞野「あっ、そういえば『ハツリプ』は歌恋さんのお家が経営されている事務所のアイドルでしたね」
歌恋「そう、だからこの時期に転校させることができたりもするというわけですけど、目的が舞野さんだったとはわたくしも存じませんでしたわ」

舞野「颯斗さんは一体何者なんでしょう?」
歌恋「さあねえ、わたくしもよく知りません。ただまあ舞野さんなら彼が何者か知れるかもしれませんわね。惚れられているんですもの」

歌恋は舞野に封筒を差し出し、受け取った舞野はそれを開けた。
歌恋「わたくしからのプレゼントですわ」
舞野「これは……」


舞野「ハツリプのペアチケットじゃないですか」
舞野は豪華な装飾がなされたチケットをじっと見つめる。

歌恋「関係者席ですわ。ライブを落ち着いて楽しめるでしょうね」
舞野「こんなの本当に私が貰って大丈夫なんですか?特別な人しかこない席でしょうし、普通の人が入っていい場所じゃないのでは……」

歌恋「わたくしのご友人で颯斗を惚れさせているとなればその席に座るには十分すぎるのでなくて?あと、また普通って言ってますわよ。彼に解呪されたのでしょう?」

舞野「そうでした……いろいろとありがとうございます。歌恋さん」
歌恋「ま、お楽しみになされて。一応颯斗には内緒にしてくださいね。緊張したら困りますから」


舞野「緊張なんてしますかねぇ?」
歌恋と離れた舞野は堂々と舞野と付き合いたいと自己紹介していた颯斗を思い出し少し照れた。

タジア「舞野おそよ~」
舞野「タジアさんおはようございます」
タジアは目の下にクマがあるなどきわめて眠たそうだった。

タジア「いやぁ昨日はハツリプのライブチケットの復活当選のチャンスがあってだねえ、ボクは…負けた」
タジア「負けたんだぁ……」
かなり大げさに自らの悲観を嘆いたタジアは目の下のクマも相まってとても暗い表情を浮かべている

舞野(そうだ、タジアさんに一緒に行ってもらえないか聞いてみましょう)
舞野「あの、タジアさん」


タジア「なぁに?」
舞野「もし良かったらこれ、一緒に行ってくれませんか?」

タジア「こ、これっていったいどこで???」
舞野「ええと、ある人から頂きまして……」

タジア「ほ、ほんとうにボクなんかが貰っていいの?」
舞野「はい!友達ですし私なんかよりよっぽどそのライブに行くべきだと思いますから」

タジア「ありがとう!お礼をしたいからボクにできることがあれば何でも言ってよ」
舞野「えっとそれなら…2つお願いしたいです」


タジア「なんだい?」
舞野「一つ目は、颯斗さんに私が行くことを言わないでほしいです」

タジア「そもそもボクなんかが颯斗様と話すなんておこがましくてできやしないから……」
舞野「そんなことないですよ。あんなに颯斗さんのことが好きなんですから颯斗さんだって話せば喜びますよ!」

舞野はここではっと気が付く
舞野(もしかして私なんかが…この考えはやめたんだった。颯斗さんが私のことを好きなのってファンからしたらヤバいのでは……)

舞野「あの、私が颯斗さんからどうしてか好かれている件についてなんですが……」
タジア「?舞野は美少女だし性格もいいし、どこで知り合ったのかが気になるくらいでそんなに違和感ないけど?」


舞野「ええ?私が美少女って…それにそんなに性格いいとは思いませんけれど……」
タジア「もう少し客観的に自分を見てくれよ……ボクにいわれてもかもしれないけど可愛くて性格いいよ」

舞野「そ、そうですか?ありがとうございます、でも私はタジアさんの方が可愛いと思いますよ」
タジア「そんなことない…ボクなんて…ねえ」

舞野「いやいやタジアさんてば、例えば…」
タジア「長くなりそうだからやめにしよう。二つ目のお願いって」

舞野「私にライブのいろはを教えてほしいです!コールアンドレッツポンズみたいなやつとか」
タジア「レスポンスだよ」


舞野「今までアイドルのライブに行ったことがないのでいろいろと教えてほしいです!」
タジア「ボクに任せなさいな。ハツリプのライブに必要なことを徹底的に教えてみせるよ!」

舞野「お願いしますタジアさん!」
颯斗「それオレも知りたいな~」
舞野の背後からにゅっと颯斗が姿を現す

タジア「!?!?」
舞野「え、あっ颯斗さん!?」
颯斗「どうも~」

颯斗「タジア先生よろしくお願いしますね」
タジア「あ、あ、あ……」
舞野「タジアさん~~!」
颯斗に微笑まれたタジアは倒れた



颯斗「あー、舞野さんと一緒にコーレスの練習したかったのに」

舞野「コーレス……?さっきタジアさんが言っていたレスポンスのことでしょうか?」
颯斗「そうだよ。もしかしてあんまりアイドルのことは知らなかったり?」

舞野「ごめんなさい……まったく詳しくないんです」
颯斗「ならオレが教えるよ」

舞野「じ、じゃあお願いしたいです」
舞野(アイドルからアイドルファンのことを習うって奇妙じゃありませんか?)


颯斗「それじゃライブの初めの部分から説明するね」

颯斗「オレたちのライブが始まる前には、ファンの皆でオレたちを呼ぶんだ」
舞野、うんうんとうなずきながら話を聞く。

颯斗「『ハツリプ頂戴』ってね。こんな感じさ」
颯斗は息を吸う

颯斗「ハツリプ頂戴!ハツリプ頂戴!!」
颯斗が突然大声を上げるものだから舞野はかなりびっくりとする。



舞野「えっと……」
颯斗「さあやってみてくれ」

舞野「は、ハツリプ頂戴……?」
促された舞野は困った顔で言ってみた。

颯斗「そう。そうやってオレ達が出てくるんだ。そしてその次には自己紹介ソングを……」
颯斗が大声を出したことなどでざわついていたクラス内。言いかけていた颯斗は周囲からの注目を集めていることに気が付いた。

颯斗「ごめん、つい夢中で。詳しい流れは後で連絡するよ」


舞野「えっと、お願いします。これ連絡先です」
スマホを用いてSNS上の連絡先を交換する二人

颯斗「ちょっと今のオレは格好良くなかったかもしれない。突然でかい声出して場の空気読めなすぎだったね」
舞野「いえ、そんなことは……」

颯斗「だけど、ステージ上でのオレは誰よりもカッコいいから絶対見ていてくれよ」
仕事のためじゃあと手を挙げて颯斗は帰っていく。

舞野「もしかして、私がライブに行くことバレてます?」
歌恋「そうみたいですわね。まあ仕方がないわ」
舞野(結局レスポンスの練習できていないような…)
歌恋「それはアイドル側がすることだから大丈夫ですわ」
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