最強アイドルは普通な私の特別を知っている

This is ライブ!


〇会場ドーム周辺

舞野(日々は巡って今日はライブ当日です)
たくさんの客が列に並ぶのを横目に見ながら舞野とタジアは関係者席入り口に向かっている。

タジア「結局颯斗様にバレてしまったの……ごめんね。ボクの声が大きかったのかも」
舞野「気にしないでください。教室で話した私もまずかったですし、たぶん大丈夫みたいなので」

舞野「それにしても多くの人ですね」

タジア「大人気アイドルだからね…入場だけでも一時間はかかっちゃうよ」
舞野「なんだか悪い気がしますね。並ばずに入ってしまうの」


タジア「まあせっかくだから気にせずいこうよ」
舞野「それもそうですね」

舞野「私なにも準備していないんですけど、チケット以外でなにか必要なものってあったりするんでしょうか?」
タジア「ボクが舞野の分も全部準備してきたから大丈夫!」

タジア「ま、中に入ったら説明するよ」
タジアはそういうと立ち止まってしまった。

舞野「タジアさん?」
タジア「なんだか緊張してきちゃってね。今から関係者席に行くの」

〇会場内

なんだかんだありつつ関係者席に入った舞野たち。
舞野「ここが関係者席ですか。ステージはよく見えますけどちょっと遠いですね」

タジア「なんか色々理由はあるみたいだよ。それよりこれを舞野に託そう」

タジアはペンライト、双眼鏡、ライブグッズのタオルを舞野に渡した。舞野はペンライトに反応する。
舞野「おお、これがあの色々光る棒ですか!どういうタイミングで色を変えたらいいですかね?」
タジア「ライブに合わせて自動で変わるようになってるよ」

舞野「科学の力ってすごいですね!」
タジア「どっちかっていうと技術力だけどね。それより見てよ」


タジアは声を潜めて話す。
タジア「有名人だらけだよ!!」

タジア「まずは勝くん推しでおなじみのプロレスラー”タブラ肩油”氏!」
舞野のいかつい男性がどっしりと座っている。

タジア「劉と友達のサッカー選手の本川選手に、野球選手の小城選手!」
舞野「本川選手ってゆずちゃんの憧れの人…!本当に有名人ばかりですね!」
ほかにもメンバーの家族など様々な人がいる。

タジア「それとあと……颯斗様と熱愛説のアイドル“楚々”」
舞野「あの人が……綺麗な人ですね」
場に似つかわしくない真っ黒なドレスを着た楚々は舞野と目が合ったのか微笑んでいた。


舞野(楚々さんって一曲も聞いたことないですけどどこかで見たことがある気がするんですよね……まあ、きっと動画とかでしょうけど)

タジア「いよいよ始まるよ!」
場内アナウンスがライブの注意事項を告げている。

舞野(あわわ、えっと確か颯斗さんからのメモによれば始まりの時は……)
タジア「舞野!」

タジア「何も考えず楽しんで!きっと体は自然と動くし、声も出るからさ!ハツリプってそれだけのアイドルだから!」


場内が真っ暗闇に包まれ開演を告げるブザーが鳴る。

どこからともなく湧き上がる「ハツリプ頂戴!」といった声と手拍子

舞野とタジアも声を出し、手をたたいている。会場のボルテージが最高潮に上がった頃……

劉「行くぜェ!!」
スモークとともに3人のアイドルが姿を現した。


颯斗「まずはこの曲から!」
勝「全力でぶっ飛びやがりな!」

舞野(すごいアップテンポ!会場が揺れている!)
多くの客は激しい曲を踊るアイドルたちの掛け声に合わせてジャンプを繰り返していた。

舞野(颯斗さんは……)
颯斗は踊りながらも笑顔を崩すことはない。その姿を見た舞野は思わず呟いた。

舞野「これがアイドル……カッコいい!」


劉「ちったあ温まったか“ハイジン”ども!」
ハイジン(廃人)とはハツリプのファンネーム
颯斗「ここまでは、軽い準備運動ってとこだよね!」
劉、颯斗の呼びかけにファンは歓声を挙げる

勝「野郎ども!もっと声出せんだろ!!」
男性ファンから野太い歓声が上がる(勝のファンは男性が多い)

劉「レディたちも負けてんじゃねえ!」
客席の多くを占める女性ファンが先ほど以上の歓声をあげている

颯斗「初めての人も楽しんでいきましょ~!」
舞野「はい!颯斗さん!」
舞野もいつも間にか夢中になって声を出していた


劉「じゃ、次の曲にいくとするか」
勝「静かに、そして清らかに叩き込む……」

颯斗「『MOON BREAK』」

先ほどとは正反対の静かな曲であった。アイドル達が歌う中大勢の客が詰めかけている会場も水を打ったように静まり返っている。

舞野(なに……あの悲しそうな顔。悲恋を歌う曲の通りで……)


何曲かライブが進んだ後、楽し気な曲が始まった。
颯斗「楽しく盛り上がっていきまShow Time!」
劉「Yo!Yo!っていえYo!」

勝「Yoッ!Yoッ!」
舞野「Yo!Yo!」
舞野はタオルを回しながら声を出している

舞野(今度はふざけた楽しい曲…!アイドルって恋の歌だけじゃないんですね!)
アイドル達はパーティ眼鏡をかけながら踊っている。

舞野(颯斗さんもすっごく楽しそう!子供みたいな可愛い笑顔です!)


颯斗「残念だけど今日はここでお別れの時間になってしまったんだ」
劉「また次のライブで会おうぜ!」

勝「じゃあな!!」
客席に背を向けゆっくりと昇降ステージで消えていくアイドル達
舞野(そんな…まだ体感10分経っていないのに……)

どこからともなくアンコールの声が上がっている。
タジア「アンコールだよ舞野!ハツリプはここからが本番だ!」

舞野とタジアもアンコールを叫ぶ。そしてアイドル達が姿を現す!
颯斗「皆さんの声にお応えして!」
劉「戻ってきたぜ!!」

〇ライブ後電車内
舞野の住む町が都心から離れていることもあり夜をはしる電車内は二人がゆったりと座れるような状況だった。

舞野「アイドルって本当に凄いんですね!」
タジア「何回も言ってるよ。けどボクも何度でもいうさ、アイドルって、ハツリプって本当に凄いでしょ!」

舞野「一瞬で終わってしまって、もっともっとあの世界にいたいのに……」
タジア「アンコールって実は1時間あったんだよね~一瞬だけど」

舞野「それに颯斗さんですよ!なんですかあの人は!表情も雰囲気も曲に合わせて全部変えるって!」
タジア「それが颯斗様の凄いとこなの。変幻自在の最強アイドル」

舞野「最強アイドル……」
舞野(本当に、本当に格好良かったです。颯斗さん)
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