白い花のバラッドⅠ



 「久しいな」


 白髪からのぞく双眼がこちらを見る。
 

 嗄れた声で紡ぐその声にアタシを抱き締める母の腕が力を増した。


 父は無言で祖父を睨みつけていた。二人の間にあるのは敵意で、久しぶりの親子の対面とは思えないほど。


 緊迫する空気の中でそろりと顔を上げて観察するように目を泳がせた。彼等の背中に見えるのは天使特有の大きな白い羽根。金属の装飾がつけられた軍服のような白い服に身を包むその姿。
 

 初めて見る出で立ちに釘付けになる。


 ただ、祖父以外の天使達はフードを深く被っているためその顔はよく伺えない。


 すると、不意にその中に羽根を持たない者が一人いることに気が付いた。


 サラリとした金髪に鋭く尖ったような瞳を持つ男だ。無表情にあいまって残忍にも見える瞳と目があった途端体に戦慄が走った。



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