白い花のバラッドⅠ




 いつもの向日葵のような笑顔は、今はアタシを安心させてなどくれない。


 その笑顔は募っていく不安を只々煽っていくだけなのだから。


 ──────嫌だ!


 生まれた結論はそれしかない。


 だってそうでしょう?

 父が足止めをしているはずなのに天使がこっちに向かってきてるってことは……父は……。


 「…、いや」

 「ヒカリ」

 「やだ!行かないでッ!」



 駄々をこねる子供のようにアタシは母に抱きついて、ありったけの力を込めて母にしがみつき絶対に離すまいとした。今度こそ父のように離れたりなんかしない。



 恐怖が渦巻いて、渦巻いて、幸せな時間さえも絡め取ろうとする。


 幸せな日々がこんな簡単に失われてしまうなんて初めて知った。


 先程と同じように我儘を言うアタシの背中をトントンと宥めあやす母。


 「……ヒカリ聞いて? ヒナタの名前はね、陽だまりのように生きて欲しいって意味でつけたの」


 不意にそんな声を零す。


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