白い花のバラッドⅠ
「こんな所にいたのね」
唄を唄い終えると不意に後ろから声がかけられた。
凛と響くような、包み込むような優しい声が耳に届く。
「何、母さん?」
振り返ると其処には、金の長い髪を靡かせアタシと同じ真紅の瞳でこちらを見つめる母がいた。
「何じゃないでしょ? 今日はお母さんのお手伝いするって言ってたじゃない」
まったく、と小さく呟くと母はため息をつく。
「お父さんも探してたわよ」
「ごめんなさい」
呆れた声にアタシは小さく反省の言葉を投げかけた。
「ほら、行きましょう」
母はそれを聞くとしょうがないわね、と言って微笑み手を差し出してくる。
アタシは躊躇うことなくその手を握った。